==== 第2章 オルタードスケール (ALTERED SCALE) ====



裏コードの事を語るのに、オルタードスケールのことに触れないわけにはいかないだろう。ただ、私としては オルタードスケールをベースに話をするのは若干の抵抗がある。というのは、オルタードスケールに関しては 数々の憶測や、いかがわしい説が横行しているように思われるし、あくまで最初に裏コードありきで、敢えてそれを 表のコード上で考えたときにこんなスケールが考えられるというようなものだと思うからである。しかしながら、 数々の憶測や、いかがわしい説からくる混乱を整理するためにもきちんと説明する必要があるだろう。

まず、オルタードスケールの説明に入る前にドミナントセブンスコードのテンションについて若干の説明を加えてみよう。 ドミナントセブンスコードには実に様々なテンションがつけられるのは御承知の通りである。メジャースケールの5度から 始まるミクソリディアンスケール上にある、ナインス、サーティーンスといったテンションの他に シャープナインスだのフラットサーティーンスだのオーギュメンテドフィフスだのやりたい放題といった感じだ。 これには理由があるのだが、ドミナントセブンスコードではトライトーンがその性格を特徴づける重要な役割を果たして いることは前章で述べた通りである。逆に言ってしまえば、トライトーンさえ存在していれば、後はどんな音が はいっていても十分にドミナントとして機能するのだ。だからドミナントセブンスコードには様々なテンションを つけることが可能なのだ。

とはいっても、これらテンションはかってにつければいいというものでもなく、何か別のスケールから借りてくることが 多い。Dm7 --> G7 --> Cmaj というコード進行を例にとって考えてみよう。この進行全体をそのとおり普通に、 Cのメジャースケールの上で考えると、G7のコードスケールはミクソリディアンとなり、 テンションとしてはナインス、サーティーンスが考えられる。(譜例2−1) さてここで、本来はCの メジャースケールに解決するのだが、その代わりに解決先としてCのハーモニックマイナースケールを想定して 考えることにすると、G7のコードスケールとして、Cのハーモニックマイナースケールを5度(Gの音)から始めた スケールが想定できる(譜例2−2)。したがってG7のテンションは、フラットナインス、 フラットサーティーンスとなる。これらのテンションはCのハーモニックマイナースケールから「借りてきた」 と考えることができ、このテンションを使うと、CメジャーのキーのなかでG7の所だけ一時的にCマイナー (ハーモニック)のサウンドが示唆され、一瞬そこはかとない哀愁が漂うような効果がある。

さて以上のことをふまえて オルタードスケールの話に入ってみることにする。つまり、オルタードスケールとは「裏のスケールから音(テンション) を借りてきてできたスケール」と解釈するのである。Cメジャーのキーで考えると、G7のコードスケールは ミクソリディアンになる。そこでそのスケールのまったく裏にあたるDbミクソリディアンを想定して、そこから テンションを借りてきてみよう。ここではあくまでG7のコードスケールとして考えていくので、まずルートのGの音は 欠かせない。また、トライトーンのBとFは両方のスケールに共通なので、これら以外の音を裏から借りてくることになる。 Dbミクソリディアンスケールのうち、Gbの音はルートのGとトライトーンの片割れであるFに挟まれて相容れないので、 借りてこないことにする。残りのDb、Eb、Ab、Bbを借りてきて、トライトーン(BとF)と共にルートのGの 上に載せるとGオルタードスケールになる(譜例2−3)。トライトーンは二つのスケールに共通なのだから、 いいかたをかえれば、「オルタードスケールとは、ルート以外の音はすべて裏コードの音からできたスケールである。」 ということになる。GオルタードスケールはG7のコードスケールでありながら、裏コードであるDb7のサウンドを 非常に強く示唆するものなのである。